ルーミス先生の間違い探し


(アマゾン)

やさしい人物画

絵描きを目指すものなら誰でも一度は耳にする名著、
「FIGURE DRAWING FOR ALL IT’S WORTH やさしい人物画」

私が最初に絵を描くために買った懐かしの本です。
ルーミス先生は今なお世界中の画家の師として尊敬を集めていますが、
初版が1943年と大変古く、解剖図の間違いが多数あるものです。

情報を集めることが現代と違って困難であっただろう時代に、
これだけの本を出したことは素晴らしいことですが、
学習時には困ることもありますので、私の見つけた範囲で
修正した解剖図を掲載致します。

P.54 腕の筋,前面 修正箇所



「Figure Drawing For All It’s Worth」Loomis 1943 P.61
朱部分は指摘箇所。和書ではP.54に該当する。



番号と名称が合致していない誤記を修正
追記 4:烏口腕筋→上腕筋
5:回外筋→腕橈骨筋
8:長母指伸筋→長母指外転筋
17:腕橈骨筋→短橈側手根伸筋
(8、17はP.55の類似図と整合をとるため追加)

右下の図は左腕に右手がついているので、
左手が描かれていなければおかしい。

これは誤りではないが、
上腕二頭筋腱膜が描かれている図と省略した図が混在しているので注意。

P.55 いろいろな方向から見た腕の筋 修正箇所



「Figure Drawing For All It’s Worth」Loomis 1943 P.62
朱部分は指摘箇所。和書ではP.55に該当する。



上段の「右腕の内側」「下側及び内側」は
筋肉の起始部、停止部が違っているので修正する。
肘の内側の出っ張り(上腕骨内側上果)から
9:尺側手根屈筋
10:円回内筋
11:橈側手根屈筋
12:長掌筋
主に4本の筋肉が起始している。

手首の真ん中を触ると二本の腱がある。
橈側手根屈筋と長掌筋。触って確かめると覚えやすい。

手首の小指側端の腱が尺側手根屈筋の腱である。
これも触って確かめてみよう。

美術資料としてはあまり意味はありませんが
上記以外にも浅指屈筋、深指屈筋の腱やインナーマッスルがあります。

☆豆知識
長掌筋は生来の欠損が多く、
腱が2本あるなど色々なタイプがある。
退化しつつある筋なので無くてもあせらないこと。

 
肘から小指側に向けて、尺骨が触れる位置にある。尺骨によって
下腕内側の筋(主に屈筋)
下腕外側の筋(主に伸筋)
に分断される。美術的にも尺骨は重要なポイントなので良く覚えておくこと。

マッスル講座の「★腕まわり」でも紹介していますので。こちらもよろしく。


下段「内側(体側」は他と整合を取るため番号を修正する。
下段「外側」8番の位置が他と違うので修正する。
下段「背側」「背側,手掌を内側に向けたとき」は
筋肉の起始部、停止部が違っているので修正する。
やはりポイントは尺骨である。

P.56 下肢の筋,前面 修正箇所



「Figure Drawing For All It’s Worth」Loomis 1943 P.63
朱部分は指摘箇所。和書ではP.56に該当する。



追記 8:内側直筋→内側広筋
筋肉の起始部、停止部が違っているので修正する。
1:腸骨筋は骨盤に起始し、大腰筋と共に大腿骨内側の出っ張り(小転子)で停止する。
表記の無い大腰筋、大内転筋を加え修正するとこのようになる。

P.57 下肢の筋,背面および側面 修正箇所



「Figure Drawing For All It’s Worth」Loomis 1943 P.64
朱部分は指摘箇所。和書ではP.57に該当する。



「背面」「外側面」番号が間違っている部分を修正する。

20:半腱様筋
21:大腿二頭筋長頭
は坐骨の背面端から起始していることに注意。
原著では骨盤にパースがかかっているため20、21が外向きに描かれている。

マッスル講座の「★下半身」もよろしく。

最後に

ルーミス先生の本は本当に素晴らしい。
今後も読み継がれていくことは間違いないでしょう。

手を加えるべきではないものだとわかっていても、
現役の教本として一線で使われ続けていくという観点からすると、
修正できないことは残念なことのようにも思います。

私の知識もまた完全なものではないかもしれません。
この「ルーミス先生の間違い探し」の間違い探しも歓迎します。

お絵かき研究所の「マッスル講座」も含め、
修正すべき箇所があれば、お気軽にご連絡頂けると大変助かります。


引用文献
「Figure Drawing For All It’s Worth」(1943) pp.61-64
William Andrew Loomis

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